歯根の先の病気の治療(根管治療/歯内療法)

  • 根管治療

皆さま、こんばんは。さとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

 

歯が痛い!という訴えで当院に来られる方で、

 

『寝られない程痛いんです!』

 

という場合の原因で多いのが、虫歯が歯髄(神経)まで達していることによって歯髄に重度の炎症が生じた状態である【不可逆性歯髄炎】と、歯髄が不可逆性歯髄炎か歯髄壊死に陥っていることが原因で起こっている【根尖性歯周炎】の二つです。

※他に痛みの原因としては、大きな虫歯による可逆性歯髄炎の他、歯周病の炎症が重症化した場合や、親知らずの周囲に汚れがたまって炎症が強くなっている智歯周囲炎など様々ありますので、適切な検査のもと診断を受けた上で治療を受けるようにしてください。

 

 

これらを治すために、歯科医院では歯内療法(根管治療)を行うのですが、実はこの歯内療法の成功率は100%ではないのです。

(治療の受けられる患者の皆さまからすると、歯科医院を受診して根管治療を受ければ当然治るのだろうと思われていることと思います。)

 

 

須田英明先生の報告(わが国における歯内療法の現状と課題,日歯内療法誌,2011)を参考に、歯内療法の成功率を算出すると、

日本における保険治療で行なった歯内療法の成功率:約50 %

 

 

一方で、歯内療法専門医の成功率は以下のように言われています(世界基準の臨床歯内療法,石井宏著,医歯薬出版株式会社,2015)。

病変のないinitial treatment(未治療の根管への治療):約90 %

病変のあるinitial treatment :約80%

retreatment(再治療):約70%

 

 

日本の保険治療で行なった場合の成功率と、専門医が行なった場合でかなり成功率に差がありますよね。

では、なぜこれほどまでに差が出るのでしょうか?

 

それには、感染予防のためのラバーダム防湿の使用や、高精度なCTによる検査、歯科用顕微鏡や種々の器具の使用、治療手技の熟達など様々な要因があろうかと思います。

当院では、できる限り歯を長持ちさせる(抜歯を回避する)ための歯内療法を実践できるように、歯内療法専門医の治療方法を参考に努力しております。

 

 

 

前置きが長くなりましたが、本日のご紹介させて頂く患者さまです。

 

『左下奥歯が痛い!』

 

とのことで当院を受診されました。

 

通法に従って歯内療法を行い、今は経過良好にて定期メインテナンスに通っていただいています。

 

 

 

***********************************************************************************************

【担当医】

佐藤公麿

 

【治療期間】

約5ヶ月(4回)

 

【治療内容】

左下第二大臼歯に対し、【歯髄壊死/急性根先性歯周炎】の診断のもと歯内療法を行いました。根管充填後に仮歯で歯石取りなどを行いつつ経過観察を行なった後(噛んでも痛くない状態になるまで経過をみて)、被せ物(銀歯)にて機能回復を行いました。

 

【費用】

全て保険治療の範囲内での対応

※歯科用CTによる精査、顕微鏡を用いた歯内療法は保険治療内で行うことが可能です。

ただし、使用できる材料や時間などの制限があるため、より成功率を高めるためには自由診療での歯内療法を行うという選択肢もあります。

 

【リスク・副作用】

本症例は、『病巣のあるinitial treatment』に該当し、上記の歯内療法専門医による歯内療法でも成功率が80%とされています。

治らなかった場合や今後の病巣再発の場合は、再植などの外科的な処置が必要になる可能性があります。

***********************************************************************************************

(臨床写真の掲載については、患者さまに掲出の同意を得ております。)

ページの先頭へ戻る