スポーツ中の歯の外傷 ― 17歳男性の症例から学ぶ適切な対応の重要性

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Vol.108

みなさま、おはようございます!さとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

スポーツ活動の中での歯の外傷は、決して珍しいものではありません。特に思春期の学生は部活動やクラブチームでの試合・練習中に転倒や接触事故が起こりやすく、歯に強い衝撃を受けることがあります。今回は17歳の男子高校生がスポーツ中に前歯を外傷し、#11(右上中切歯)の歯冠破折と、#21(左上中切歯)の挺出脱臼(extrusive luxation)を起こした症例をご紹介します。


症例概要

 

 ・患者:17歳、男性

 ・原因:部活動中の接触事故

 ・診断#11(右上中切歯):歯冠破折(traumatic crown fracture)

     #21(左上中切歯):挺出脱臼(extrusive luxation)

 

 

挺出脱臼とは、歯が歯槽窩から部分的に引き抜かれ、通常よりも長く見える状態を指します。歯根膜の損傷が強く、処置が遅れると歯髄壊死や歯根吸収を起こすリスクが高くなります。

 


行った処置

 

1. 挺出脱臼歯の整復と固定

 

#21は通常より挺出していました。手指で正しい位置に慎重に戻し、隣接歯とレジン+ワイヤーでスプリント固定を行いました。これにより歯根膜が治癒する環境を整えました。

2. 歯冠破折への対応

 

#11は象牙質に達する破折で歯髄が露出。ラバーダム防湿下で生活歯髄療法(vital pulp therapy)を実施し、その後コンポジットレジン修復で形態と機能を回復しました。見た目も自然で審美的に仕上がりました。

 

3. 経過観察

 

外傷歯は、数週間から数か月後に歯髄壊死・歯根吸収・歯周組織の異常が現れる可能性があります。そのため定期的なレントゲン検査と歯髄診査で、長期予後を確認する必要があります。

 


外傷時の対応が重要な理由

 

歯の外傷は、受傷直後の処置が早ければ早いほど歯を残せる可能性が高くなります。

対応が遅れると、以下のようなリスクがあります。

  • 歯髄壊死による神経の喪失

  • 歯根吸収や歯槽骨の異常吸収

  • 二次感染による膿瘍形成

  • 最悪の場合、抜歯に至る

 

今回の症例では迅速な処置により、歯髄を保存し、審美性と機能性を回復できました。


保護者・患者さんに知っておいてほしいこと

 

  1. 外傷直後はできるだけ早く歯科へ

    時間が予後を左右します。

  2. 歯が抜けたときの応急対応

    牛乳や生理食塩水に浸して持参してください。

  3. 予防にはスポーツマウスピースが有効

    ラグビー・サッカー・バスケットなど接触の多い競技には必須です。

 


まとめ

 

今回の症例は、17歳男子がスポーツ中に前歯を外傷し、歯冠破折と挺出脱臼を起こしたケースです。

適切な初期対応により、歯を保存し機能・審美を回復することができました。

歯の外傷は誰にでも起こりえます。万が一のときに慌てないために、正しい知識と「すぐに相談できる歯科医院」の存在がとても大切です。

岡山市南区妹尾にある当院では、外傷歯の救急処置から長期管理まで対応しております。

スポーツや事故で前歯を打ってしまった際は、お気軽にご相談ください。

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