【症例紹介】60歳代男性:左下奥歯の歯根破折に対する智歯の自家歯牙移植

  • 歯の移植

Vol.106

みなさま、こんばんは。さとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

今回は、歯根破折によって抜歯が必要になった奥歯に対し、親知らずを利用した「自家歯牙移植」を行った症例をご紹介します。歯を失った後の治療といえばインプラントやブリッジ、入れ歯が一般的に知られていますが、条件が合えば「ご自身の歯を移植する」という選択肢もあります。


初診時(2020年)

患者さまは60歳代の男性。左下の奥歯(第一大臼歯:36)の痛みを主訴に来院されました。

レントゲン検査を行ったところ、36は歯根破折を起こしており、保存治療は不可能な状態。歯根破折は歯を残すことが困難な代表的な疾患で、多くの場合抜歯が選択されます。


治療計画

36抜歯後の欠損部の治療法としては以下の選択肢が考えられました。

 ・インプラント治療:人工歯根を埋入する方法

 ・ブリッジ治療:両隣の歯を削って連結する方法

 ・部分入れ歯:着脱式の義歯を装着する方法

 ・自家歯牙移植:親知らずなどの不要な歯を移植する方法

 

患者さまは「できる限り自分の歯を活かしたい」と希望されたため、幸い健全に残っていた左下の親知らず(38)を利用して、36部への自家歯牙移植を計画しました。


治療の流れ

 ・2020年3月:36抜歯、治療計画立案

 ・2020年5月:38を36部へ移植

 ・2020年6月:移植歯の根管治療(歯の神経の治療)を実施

 ・2020年7月以降:補綴治療(被せ物)を行い、機能を回復


5年後の経過(2025年)

今回、移植から5年が経過したレントゲンを確認しました。

 ・移植歯(38→36)は周囲骨としっかり結合。

  ※ただし、遠心側の骨再生は元々の骨量が少ないこともあり限定的

 ・根尖病変(根の先の炎症)も認められず良好な状態

 ・補綴物の適合も安定し、患者さまは「違和感なく噛める」と満足

 

長期的に安定して機能していることが確認できました。


自家歯牙移植のメリットと注意点

自家歯牙移植には以下のようなメリットがあります。

 ・ご自身の歯を利用できるため生体親和性が高い

 ・歯根膜が残ることでインプラントにはない噛んだ感覚(歯根膜感覚)を維持できる

 ・条件が合えばインプラントに比べて低侵襲で行える

 

ただし、ドナーとなる親知らずや余剰歯が必要であり、歯の形態・周囲の骨の状態によっては適応できない場合もあります。術前の診査診断と経験豊富な術者による処置が重要です。


まとめ

今回の症例は、60歳代男性の36歯根破折に対して、38を移植し5年以上良好に経過している例です。歯を失った場合、インプラントが唯一の方法ではなく、条件が整えば自家歯牙移植という有効な選択肢も存在します。

岡山市で「インプラント以外の治療法を探している」「親知らずを有効活用できないか知りたい」という方は、ぜひ一度当院までご相談ください。患者さま一人ひとりに最適な治療をご提案いたします。


👉 「歯根破折で抜歯が必要と言われた」

👉 「インプラント以外の治療方法を知りたい」

そんな方は、岡山市南区のさとう歯科クリニックへお気軽にご相談ください。

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【担当医】

佐藤公麿

【治療期間】

約3ヶ月

【治療内容】

36の抜歯後に38を自家歯牙移植、歯内療法、補綴装置(FMC)装着

【費用】

保険治療の3割負担

【リスク・副作用】

・手術後の出血、腫脹などの合併症を伴うリスクがあります。また、自家歯牙移植後に歯が生着しないケースも稀にあります。

・術後に歯根吸収やアンキローシスを起こすことがあります。

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(臨床写真の掲載については、患者さまに掲出の同意を得ております。)

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