【症例紹介】40歳代女性:左下奥歯の痛みに対して「自家歯牙移植」を行った症例

  • 歯の移植

Vol.105

皆さま、こんにちは。岡山市南区妹尾にあるさとう歯科クリニック 院長の佐藤公麿です。

 

 

今回ご紹介するのは、40代女性の患者さまです。

「左下の奥歯が痛い」との主訴で当院に来院されました。検査・診断を行ったところ、左下第一大臼歯(36)の歯根破折が確認され、保存が困難な状態でした。歯根破折は、神経を取った歯や過去に大きな修復治療を受けた歯でしばしば起こります。残念ながら、破折してしまった歯を接着して機能回復するのはほぼ不可能であり、多くのケースで抜歯が必要です。

しかし、この患者さまにはまだ健康な左下の親知らず(38)が残存していました。そこで、患者さんと相談し、**「自家歯牙移植」**を行うことにしました。


自家歯牙移植とは?

 

**自家歯牙移植(Tooth Autotransplantation)**とは、患者さまご自身の親知らずや不要な歯を、失われた部位に移植する治療法です。

 ・自分の歯を利用するため、生体親和性が高い

 ・噛み心地が天然歯に近い

 ・矯正治療やブリッジと組み合わせて咬合を整えられる

 ・インプラント治療に比べて骨造成が不要なケースが多い

 

といった大きなメリットがあります。

一方で、移植する歯の形態や根の発育状態、移植先の骨の条件など、適応症例は限られます。


治療経過

 

術前の状態(2022年1月)

左下第一大臼歯(36)は歯根破折により保存不可と診断しました。患者さんの希望は「できれば自分の歯で残したい」というものでした。


歯の移植手術(2022年5月)

36を抜歯し、その部位に38を移植しました。移植直後は縫合を行い、慎重に経過観察を続けました。


根管治療(2022年6月)

移植後、歯の安定を確認したうえで、根管治療を実施しました。これは、移植歯を長期的に機能させるために不可欠な処置です。


術後3年の状態(2025年7月)

移植から3年が経過しましたが、患者さんはしっかりと噛める状態を維持しており、X線写真でも良好な骨の治癒が確認できました。炎症もなく、咬合も安定しています。


考察とまとめ

 

今回の症例では、親知らずを有効活用して失った奥歯の機能を回復することができました。自家歯牙移植は、全ての患者さんに適応できるわけではありませんが、条件が揃えばインプラントやブリッジに代わる非常に有効な治療法です。

自家歯牙移植が適している方

 

  • 親知らずが残っている方

  • 奥歯を抜歯しなければならない方

  • 「できるだけ自分の歯で噛みたい」と考えている方

 

当院では、歯をできる限り残す治療に力を入れています。インプラントや入れ歯がすぐに必要になると考えていた方でも、親知らずを活用することで自分の歯で噛める可能性があります。

 

「奥歯が割れてしまった」「抜歯といわれたけれど、できれば自分の歯で噛みたい」そんな方は、ぜひ一度自家歯牙移植という選択肢をご検討ください。

当院では、歯周病専門医・指導医による高精度な診断・治療を行い、患者さん一人ひとりに最適な治療法をご提案いたします。

👉 奥歯の痛みや抜歯の相談、親知らずの活用について気になる方はお気軽にご相談ください。

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