矯正治療後に起きた歯肉退縮と知覚過敏を根面被覆術を用いて治した症例

  • 歯周病治療

Vol.89

みなさま、こんにちは。岡山市南区妹尾のさとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

本日は、矯正治療後に歯茎が下がり、知覚過敏で悩まれていた20歳代女性に対して、結合組織移植(CTG)による根面被覆術を行った症例をご紹介します。

 

近年、矯正治療を受けられる方が増えていますが、それに伴い

 

「矯正後に歯茎が下がった」

「矯正後に歯がしみる」

 

といったトラブルに悩む患者さまも多くなっています。特に、歯の移動に伴って骨が薄くなった部分では、歯肉退縮が生じやすくなります。

 

このような場合、ブラッシング指導や知覚過敏抑制剤では十分な改善が得られないことも多く、歯茎を戻すためには外科的アプローチが必要になることがあります。

 

その代表的な治療が、結合組織移植(CTG)による根面被覆術です。

 

【症例紹介】矯正治療後に歯茎が下がった20代女性

患者さまは、矯正治療終了後、右上の歯茎が徐々に下がり始め、冷たい飲み物でしみる症状が出現したためご来院されました。

初診時の状態はこちらです。

 

歯茎の退縮により、歯根面が大きく露出しているのが分かります。特に、矯正後の移動量が大きかった歯では、こうした歯肉退縮が起こりやすい傾向にあります。

知覚過敏用の歯磨剤を使用しても症状が改善しなかったため、結合組織移植(CTG)による根面被覆術を行うことにしました。

 

【手術の様子】結合組織移植(CTG)を用いた根面被覆術

手術は、局所麻酔下で行いました。まず、上顎の口蓋部から結合組織を採取します。

実際の術中の写真はこちらです。

手術時間はおよそ1時間。患者さまにも大きな痛みや不快感はなく、術後経過も順調でした。

 

【術後の経過】2年半後も良好な状態を維持

術後の経過は非常に良好で、2年半後にはこのような状態になっています。

ご覧いただくと分かる通り、しっかりと歯根面が覆われ、自然な歯茎のラインが回復しています。また、術後の知覚過敏症状も完全に消失し、患者さまには大変ご満足いただきました。

 

【治療概要】

・担当医:佐藤公麿(日本歯周病学会認定専門医・指導医)

・治療内容:結合組織移植(CTG)による根面被覆術

・費用:自由診療 110,000円(税込)

・治療期間:手術当日+術後2〜3回の通院、以後定期メインテナンス

 

【リスク・副作用】

・術後に一時的な痛みや腫れ、出血を伴う可能性があります。

・口蓋部(結合組織採取部位)の違和感がしばらく続くことがあります。

・術後に過度なブラッシングや強い機械的刺激が加わると、再度歯肉退縮を起こすリスクがありますので、適切なブラッシング指導のもとメインテナンスが重要です。

 

【矯正治療後に歯茎が下がってしまった方へ】

矯正治療後の歯肉退縮や知覚過敏は、早期に対応することで将来的なトラブルを防ぐことが可能です。歯茎が下がったまま放置すると、さらに退縮が進行してしまうこともあります。

結合組織移植(CTG)による根面被覆術は、審美的な回復だけでなく、歯を長持ちさせるためにも非常に有効な方法です。

「矯正後に歯茎が下がって気になる」「矯正後に歯がしみる」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

(※本症例の臨床写真掲載については、患者さまに掲出の同意をいただいております。)

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