Vol.102
こんにちは。岡山市南区妹尾にある さとう歯科クリニック 院長の佐藤公麿です。
最近、矯正治療が終了した後に**「歯ぐきが下がって見た目が気になる」**、「知覚過敏がつらい」といったお悩みを持って来院される患者さまが増えてきました。
これらの症状は、「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼ばれる状態で、矯正治療の影響により歯ぐきが後退して歯の根が露出してしまうことが原因です。
この記事では、そんなお悩みに対して当院で行っている「**根面被覆術(こんめんひふくじゅつ)」」について詳しくご紹介します。
なぜ矯正後に歯ぐきが下がってしまうのか?
矯正治療は、見た目や咬み合わせを改善する素晴らしい方法ですが、以下のような原因により歯肉退縮が起こるリスクがあります。
・歯が骨の範囲を越えて大きく動かされた場合(唇側・舌側への移動)
・歯肉がもともと薄い(「薄い歯肉形態」)
・矯正中の歯磨き不足や炎症
・過度な矯正力や長期のブラケット装着による影響
こうした要因により、歯の周囲の骨や歯ぐきが失われ、歯の根が露出する状態となります。
歯肉退縮が引き起こす問題
歯肉退縮によって起こる症状には、以下のようなものがあります。
・見た目の不調和(審美障害)
前歯の歯ぐきが下がると、歯が長く見えたり、左右差が目立つようになります。
・知覚過敏
歯の根の表面(象牙質)が露出することで、冷たい水やブラッシングで「キーン」としみるようになります。
・むし歯のリスク増加
露出した根面は、エナメル質に比べて酸に弱く、むし歯になりやすい部分です。
・歯周病の進行
プラークがたまりやすくなることで、歯周病のリスクも高まります。
歯ぐきを取り戻す「根面被覆術」とは?
当院では、失われた歯ぐきを再生・回復させる治療として「根面被覆術(こんめんひふくじゅつ)」を行っています。
これは、結合組織移植術(CTG) や 歯肉弁移動術(CAF) を用い、露出した歯の根に歯ぐきを再生させる歯周形成外科です。
▼ 特徴
・見た目を自然に回復
・知覚過敏の軽減・消失
・歯周組織の健康維持
・審美的にも機能的にも長期安定性がある
当院の症例紹介
【症例1】矯正中に起きた歯肉退縮に対するEMD+CTG(20代・女性)
矯正治療中に前歯の歯肉が大きく退縮。エナメルマトリックスタンパク(EMD)と結合組織移植(CTG)を併用し、6ヶ月後には歯ぐきが自然なラインまで回復しました。
【症例2】矯正治療後の歯肉退縮に対する根面被覆術(20代・女性)
右上の極端に下がった歯ぐきが気になって来院。手術翌日の腫れも軽度で、1ヶ月後には美しい歯肉ラインを獲得でき知覚過敏の症状も消失しました。
【症例3】上顎犬歯〜小臼歯部の歯肉退縮(30代・女性)
中等度の退縮に対しCTGを行い、2年後の時点でも安定した歯肉の厚みと高さを維持しています。
【症例4】広範囲に及ぶ歯肉退縮に対する複数歯への根面被覆(40代・女性)
前歯部から小臼歯部にかけて、広範囲に歯肉が退縮しており、審美的にも機能的にも大きな影響が出ていたケースです。患者さまは、「20年以上の間歯肉が下がっているのがコンプレックスで鏡で口元を見ることができない」「ブラッシング時のしみがつらい」と来院されました。
CTGを用いて複数歯にわたる根面被覆を実施し、1ヶ月後には厚み・高さともにバランスよく回復。自然な歯肉ラインを再構築することができました。
今回は患者様のご希望もあり広範囲にわたって一度に根面被覆術を行ったため,術後の痛みや腫れは通常よりもありましたが、治療結果に大変喜んで頂き、私自身も非常に嬉しく感じた症例です。今後は他部位の根面被覆も順次行っていく予定です。
根面被覆治療はこんな方におすすめです
・矯正治療後に「歯ぐきが下がった」と感じる方
・冷たいものがしみる知覚過敏がつらい方
・見た目の左右差が気になる方
・将来的に歯を長く健康に保ちたい方
費用と治療の流れ
● 費用(自由診療)
・根面被覆術(1歯):110,000円(税込)
※歯数や範囲によって異なります。カウンセリング時にご案内いたします。
● 治療の流れ
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初診・カウンセリング
退縮の原因と範囲を診断します。
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精密検査・診断
歯周組織の状態を正確に把握。
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術前クリーニング・ブラッシング指導
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外科処置(CTG・CAFなど)
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術後経過観察(1週間・1ヶ月・3ヶ月・半年)
よくあるご質問(Q&A)
Q:手術は痛いですか?
→ 術中は麻酔を使用し、ほとんど痛みはありません。術後は鎮痛薬を処方し、腫れや違和感も数日で軽減します(ただし、広範囲でも施術をご希望の方は通常よりも腫れや違和感がやや多いことがございます)。
Q:移植はどこから取るの?
→ 主に上あごの内側(口蓋)から自家組織を採取します。
Q:見た目はどのくらい良くなりますか?
→ 個人差はありますが、多くの患者さまが**「以前よりもずっと自然な歯ぐき」**と満足されています。
最後に:あなたの歯ぐき、あきらめないでください
矯正治療後の歯肉退縮は、決して「もう仕方ないこと」ではありません。
現代の歯周形成外科では、適切な診断と技術で歯ぐきを回復させることができます。
「もう少し歯ぐきが戻れば…」
「見た目が気になるけど、相談するのは不安…」
そんな方こそ、まずはお気軽にご相談ください。