割れた歯(歯根破折歯)の保存の試み:歯科用顕微鏡を用いた治療

  • 虫歯治療
  • 歯周病治療
  • 根管治療

Vol.91

みなさま、こんばんは。さとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

今回は、「左下第一大臼歯の歯根破折」に対し、精密根管治療および外科的歯内療法を行い、術後1年半にわたって良好な経過を維持している症例をご紹介いたします。

 

患者様は30歳代の男性で、「歯が痛い」「噛むと響く」といった症状を主訴に来院されました。以前に受けた治療後から違和感が続き、別の歯科医院では「この歯はもう抜歯しかありません」と診断され、不安なお気持ちで当院を受診されました。

 

しかし、患者様ご自身が「できることなら歯を抜かずに残したい」という強い思いをお持ちであったことから、当院では歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を活用し、歯の保存を目指した治療を行うこととしました。


 

【初診時の状態】

左下第一大臼歯は、歯ぐきの腫れと軽い動揺が見られ、CBCT(3次元レントゲン)により分岐部および遠心根に歯根破折を疑うX線透過像が確認されました。

破折線は根の中央部までおよび、一般的には保存が難しい状態とされるケースでした。

しかし、歯の破折の程度と位置、周囲骨の状態、咬合(かみ合わせ)や修復可能性などを総合的に評価し、歯科用顕微鏡を用いた精密根管治療と外科的歯内療法を治療方法としてご提示致しました。


 

【治療内容】

本症例では、精密根管治療および外科的歯内療法を2段階に分けて行いました。

第1段階:マイクロスコープを用いた根管治療

  • ラバーダムを装着し、無菌的な環境下で処置を実施

  • マイクロスコープ下で破折の確認と感染源の徹底除去

  • 高い封鎖性を誇るバイオセラミック材料での根管充填

 

第2段階:外科的歯内療法

  • 遠心根の根尖を切除し、破折部を清掃・逆根管充填

  • 歯根破折部を慎重に削りセメントで封鎖
  • フラップ閉鎖後、治癒を促すための経過観察を実施

 


 

【治療から1年半後の状態】

術後1年半が経過した現在でも、歯ぐきの腫れや違和感は一切なく、咬合時の痛みも消失し、患者様は通常通りの食事を問題なく行えています。

CBCT画像では、破折部周囲にあった透過像(黒い影)も消失し、骨の再生が良好に進行していることが確認されました。また、隣の第二大臼歯の根尖病変も治癒傾向であることが確認されました。

 


 

【治療詳細】

  • 担当医:佐藤公麿

  • 治療期間:根管治療3回、外科的歯内療法1回、経過観察を含め約6ヶ月

  • 費用

     ・精密根管治療(既根管治療歯)132,000円(税込)

     ・外科的歯内療法(歯根端切除術)110,000円(税込)

     ・ファイバーコア 16,500円(税込)

     ・ジルコニアセラミッククラウンによる補綴 154,000円(税込)

  • 使用機材

     ・歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)

     ・CBCT(三次元画像診断)

     ・ラバーダム防湿

     ・バイオセラミックシーラー(根管充填材)

    ・スーパーボンド

 


 

【リスク・副作用について】

  • 歯根破折の位置や程度によっては、保存が困難となることがあります。

  • 外科的処置後、一時的な腫れや違和感が生じることがあります。

  • 精密な処置を行っても、必ずしもすべてのケースで歯の保存が成功するわけではありません。

 


 

この症例が示すように、「歯を抜かないといけない」と言われた場合でも、マイクロスコープやCBCTを活用した診断と治療によって、歯の保存が可能となるケースもあります。

歯は一度抜いてしまうと、二度と元には戻りません。ご自身の歯を大切にしたいという思いを、私たちさとう歯科クリニックは全力でサポートします。


 

「歯が痛い」「歯を抜かないといけないと言われた」

そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、さとう歯科クリニックまでご相談ください。

私たちは、一本でも多くの歯を守ることをモットーに、科学的根拠に基づいた丁寧な診療を行っています。

※本記事に掲載している画像は、患者様の同意を得たうえで使用しています。

ページの先頭へ戻る